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亡妻に瓜二つな娘と

うちは嫁さんが娘を産んですぐ死んでしまった。

俺は娘を食わせてやることで手一杯。
かなり仕事の虫になってた。
そのこともあって娘の面倒をほとんど見てやれなかったけど、娘は幼いながらにちゃんと事情を汲んでくれた。

もちろん再婚も考えたけど、娘は「あたしは平気だからお父さんが決めて」の一点張りで俺のことを気遣ってくれた。
それに俺自身、嫁さんの姿が目の裏に焼きついて離れないので諦めた。
正直、泣きそうなくらい娘が不憫で、だけど今さらどうしようもできなくて涙をこらえたよ。

そうして、仕事して収入を得るのは俺の役目。
家事全般をこなして家を守るのが娘の役目。
自然とそんな感じの役割分担になってた。

ある日、俺が「おや、○○さん(娘の名前)。今日の煮物はいつもと違うね」とか冗談っぽく言うと、
「よくわかったね、□□くん(俺の名前)。ちょっと味付け変えたんだよ。いっぱい食べてね」って返してくれた。

俺はとても嬉しくて何度もそういう口調で話しかけたんだ。
すると娘も調子を合わせてくれて、
いつしか俺と娘は互いに「くん」と「さん」付けで呼ぶようになった。



もともと片親で、しかも駆け落ちみたいな学生結婚だから親族に頼ることもできなくて貧乏だったってのもあると思う。
あまりに孤立無援の特殊な環境だからこそ、娘はその他愛の無い、わざと距離を置くような冗談に付き合ってくれたんだと思う。

実はその「くん」と「さん」って呼び方、俺と嫁さんがたびたび言い合っていた冗談だったんだ。
結婚する以前、嫁さんと目が合うたびに照れ隠しでそういう言葉遣いになることがよくあって、俺と嫁さんだけの秘密の呼び方だった。

そういった事情を知らないはずの娘が嫁さんと同じように返事してくれて俺は異常なまでに嬉しかったよ。

だけどそんな喜びも時が経つにつれて苦痛に成り代わっていった。
娘は成長すればするほど嫁さんそっくりになっていった。
振り返りざまに猫みたいにニカッと笑う仕草は瓜二つだし、嘘つくとすぐ耳が赤くなるのも似ていた。

容姿も声も、面倒見のいい性格も、さらには話し方まで似てきたんだ。
呼び方が「くん」とかだけではなくて、語尾を間延びさせて甘えてくるところとか、そういう細かいところがどんどん似てくるんだ。

俺は本当に悩んだ。
日に日に嫁さんに似ていく娘がいとおしくてたまらなかった。

幼いころはまだ良かったんだ。
純粋に「子供」へのかわいさだけで見られたから。

でも高校へ進学し、大学へ上がったころには一人前に色気をまとって「女」になっていた。
嫁さんの面影がある娘は「子供」としてかわいいと同時に、「女」として俺の目に映ってきた。

それからは真っ直ぐに娘の目を見ることが出来なくなった。
顔も声も話し方も、全部が全部いなくなったあの人にそっくりで、まるで嫁さんが生き返ったような錯覚を覚えたこともあった。

娘と接していると次から次へと昔のことを思い出してしまってつらかった。
それに何より、血の繋がった娘に欲情してしまう自分に幻滅した。
だけどどうしようもなかった。愛しくて、触りたくて、抱きしめたくて。

で、俺が勝手に懊悩していると目聡い娘は当然のようにそのことに気がついた。
「寝言でお母さんの名前いってたよ」
とか言われたときは心臓が止まるかと思った。

「もしかしてあたし……お母さんに似てるの?」と訊いてきた。
俺はどう答えていいかわからず、その沈黙が答えになってしまった。

娘にしてもどうすればいいかわからないようで(当たり前だけど)二人とも無言になってしまった。
だけど黙り込んでいても仕方ないから俺は洗いざらい話すことにした。

娘が死んだ嫁さんにそっくりなこと。
とてもかわいくて命よりも大切なこと。
そしてそんな娘に劣情を抱いてしまったこと。
関係が壊れることも覚悟して包み隠さず話したよ。何もかも正直に。

すべて話し終えたらまた無言になった。
娘は少し考えてから言ってきた。
「□□くんは悪くないよ。だから自分を責めないで」
俺が父親として最低のことを白状したというのに、娘はどこか悲しそうな顔で受け止めてくれた。

さらには「あたしでよければ、いいよ。代わりにはなれないけど、できることはしてあげたい」
嘘だろ、と思った反面、俺のなかの何かのスイッチが外れた気がした。

もう我慢できなかった。
頭が真っ白になって何も考えられなくて、娘に抱きついて押し倒したよ。

娘はいやな顔もしないでされるがままだった。
ただただ微笑を浮かべて俺を受け入れてくれた。

事が終わって獣みたいな感情が消えて冷静になった。
残ったのは後悔と自己嫌悪。
霞む嫁さんの記憶。
穢してしまった娘……。
死にたくなった。

いままで手塩に掛けて育ててきた娘を自分の手で穢すなんて信じられなかった。
あの人の忘れ形見でもある娘を、実の父親であるこの俺が。
目の前で横たわっていた娘が起き上がって、乱れた服装を整えながら俺の顔を見上げてきた。

「□□くん、よかった?」
その言葉を聞いて涙が出てきた。
俺のわがままで乱暴したのに、娘は文句も言わずに受け入れてくれた。
抵抗の素振りも見せず、嫌悪の感情も見せず。
俺のエゴを包んで犠牲になってくれた娘を前に、俺は泣き崩れた。
わんわん泣いてみっともない姿さらして。
娘はそんな俺をじっと見つめていた。

それから数日たって俺は考えをまとめた。
まずは娘の前で土下座して謝った。
床に額をこすりつけて謝り続けた。
我ながら白々しいと思ったけど謝らないわけにはいかなかった。

それと娘と離れて暮らすことを告げた。
こんな俺が二度と娘を傷つけないために、距離を置いて過ごさなければいけないと判断した。
今さらではあるけれど、俺にはそれくらいのことしか思いつかなかった。

娘もここ数日の俺のふさぎこみようから大体は察していたらしい。
寂しそうではあったけど了承してくれた。

そんなこんなで十年ほど経った現在も別居が続いている。
最初は仕送りをしていたけど大学卒業・就職と同時にそれもやんわりと断られた。

俺に負担をかけまいと考えてのことだろう。
どこまでも親思いで泣けてくる。

一年に数回のメールによるとそこそこ元気でやっているらしい。
ついこのあいだ(二ヶ月くらい前)
いまの彼氏と上手くいって結婚云々の段までいったら直接会いたいと言ってきた。

はやく俺に孫の顔を見せてやりたい、とも書かれていて情けなくも涙ぐんでしまった。
俺も年をとって人生の折り返し地点を過ぎた。
昔のような情欲もほとんど湧いてこなくなったし、娘と離れてからの十年間は嫁さんのことだけを考えてきた。

最近では不思議と嫁さんに会う夢を見ることが多くなった。
たぶん老い先短いということなのだろう。
あの人と再会できるならそれが本望だ。

できれば娘の子供の顔を拝んでから死にたい。
そして雲の上にいるあの人に、そのことを伝えてあげたいと思う。

長々と書いてしまった。
あのころを反芻して涙と後悔が波のように押し寄せてきた。
返す返す俺って救いようのない最低な人間だな。

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THEME:エロ体験談・告白・官能小説 | GENRE:アダルト | TAGS:

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